635 名前: 風と木の名無しさん 04/07/02 16:57 ID:pFFJ1VOy

「おまえはナルシストの変態なんだよ!ナルってみんなを強姦して回りやがって。
おまえなんか生きてる価値なし!!」
激しく断罪され、トラウマになった。
「ご、ごめんなさい。僕が悪かったよ。もうしません」
オロオロビクビクと俯いて歩き、他人と肩がぶつかっても
「ヒイイッ。ごめんなさいごめんなさい、許してください」
小さくなって謝るばかりだった今までのニホンたん。上目遣いで見舞いの品を差し出して、許し
を乞い、いっそう相手の怒りと侮りを買った。
「おまえは本気で謝ってない。一度として心から謝ったことなどない!」
居丈高に言われても、ニホンにはなすすべもない。ますます萎縮し、謝り続けるしかなかった。
「…おまえはアフォか。あいつはわざとぶつかってきたんだぞ。気づかないのか?」
「え?そうなの?…ううん、ちゃんと前を見てなかった僕が悪いんだ。みんなは悪くないよ」

そんなニホンたんだったが、実は大事な人を奪い去られ、撒き散らされた細菌兵器にじわじわと
体を蝕まれていたことに驚いて、50数年ぶりに頭(こうべ)を上げ、あたりを見回してみた。
そうしたら、周囲の景色が今までとは違って見える。
ずっと、自分だけが怪物のように凶暴だと思いこんでいた。時には息をすることさえ罪のように
感じていたこともあった。
だが、気がつけば、花畑のように思っていた世界は、弱肉強食のジャングルだった。
そして思い出した。
あの時、なぜ戦ったのか。強姦呼ばわりされたあの情事も、その時は愛し愛されてたと思って
いたことも。
自分がとてつもないナルシストだと思い込んでいたけれど、あれはただ、ごく自然な自尊心じゃ
なかったのだろうか。
そっと、自分の手を眺めてみた。血に汚れた凶悪犯の手だ。
だが、同時に、愛する人を護ろうと武器を持ち必死に戦った手でもある。
「…僕は、生きていてもいいんだろうか。もう一度、自分のために自分を愛することを始めても
いいんだろうか」
ニホンたんの自問自答は始まったばかり。     ……かもしれない。