233 名前: 風と木の名無しさん 04/10/02 15:22:24
ID:iMH11jsC 彼は夢を見ていた。 皆が彼のことを認め、祝福する夢。少年時代のいろいろな光景。 いろいろなことを教えてくれる「お兄ちゃん」と遊んだ思い出。 彼の意識が半ば醒めかけたときには、内容はあらかた忘れてしまったけれど。 よい夢だった。 今日は幸せな気持ちで目覚められそうだ。 彼の手は無意識に右側をさぐる。 同じシーツにくるまり、傍らに眠るなめらかで、熱い躯を。 ひやっとしたシーツの肌触りが、そこに誰もいないことを告げていた。 「…………!」 彼は慌てて跳ね起きた。眠気などとっくに消え失せていた。 ベッドの半分が空いている。 彼の、眉毛の太いくっきりとした顔立ちに不安と焦燥の影がよぎり、母親とはぐれた子供の表情が浮かぶ。 そのとき微かに水音を聞いた。誰かがシャワーを使っている。 彼はホッとため息をつき、のろのろとベッドから出た。 少し小柄な、しかし筋骨の発達した浅黒い身体が露わになる。股間を隠そうともせず彼は浴室へ向かった。 234 名前: 風と木の名無しさん 04/10/02 15:44:13 ID:iMH11jsC 「……………………」 階下へ降り、浴室へ近づくにつれてなにやら機嫌の良さげなハミングが聞こえる。 人の気も知らないで。 言いがかりに近いとは承知の上で、彼はそんなことを思う。 ぺたぺたと素足で廊下を歩き、浴室の前で足を止める。 ……実を言うと、彼は「一緒にお風呂」というものが好きではなかった。 肌を重ねた相手でも、だ。 いろいろと理由はあったが、まず第一に気恥ずかしいというのが先に立つ。 しかし…… 「ニホン」 名前を呼びつつ、ガチャリと浴室のドアを開けた。 「え?」 きょとんとした表情で、ニホンは彼を、タイワソを見た。 不思議に子供っぽい表情だった。 自分よりずいぶんと年上なのに、なんでコイツはこんな表情で…… そんな埒もないことをタイワソは思う。 236 名前: 風と木の名無しさん 04/10/02 16:07:27 ID:iMH11jsC 彼にはなかなか浮かべにくい表情だった。 それをタイワソがひねてると見るか、ニホンが子供っぽいと見るかは意見が分かれそうだったが。 タイワソは、ふとニホンを見た。目の前にある、シャワーに濡れた躯を。 華奢な、薄手なつくりの顔立ち。白い、なめらかな肌。黒というより焦げ茶色の、くせのある長い髪。 自分よりもかなり上背があるので目立たないが、存外厚みのある胸板。 そして…… 気恥ずかしくなって、タイワソはニホンの股間から視線を逸らせた。 自分のモノよりも、余程「凶器」っぽかったからだ。 ……気を取り直して彼は言った。 「一緒に浴びていいな?」 質問ではなく、同意を求める言い方で。 少し驚いたような表情に見えたが、やがてニホンはにっこりと微笑んだ。 「うん、もちろん」 241 名前: 風と木の名無しさん 04/10/02 17:15:34 ID:iMH11jsC 二人の身体の上をぬるめの湯が滑り落ちてゆく。 間近にニホンの肌を感じる。その肌の熱さを。そのなめらかさを。 細く、キレイな、しかしながら随分と大きな手も。 「……ふんふんふーん♪」 「………………」 「ふふふーんふふーん♪」 「………あのな」 タイワソが少し困ったように口をひらく。 「なに?」 物凄くうれしそうな表情で、ニホンが聞き返す。泡にまみれた両手はタイワソを弄るのを止めずに。 タイワソは顔を上向け、見上げるようにしながら、ちょっと怒った声音で言った。 「さっきから何をやってるんだ?」 「えー、身体を洗ってるんだけど…」 「自分の身体を洗え」 「もう洗っちゃったよ」 そういいながら、ニホンはタイワソの胸板にボディソープの泡を塗してゆく。 彼を扱うニホンの手つきがひどく手弱かで優しい。 しっかりと泡を塗りたくった後、今度は脇腹から、へその周りにかけてニホンの手が撫でる。 タイワソはくすぐったそうに身を捩った。 242 名前: 風と木の名無しさん 04/10/02 17:18:05 ID:iMH11jsC 「いいから、やめろよ」 「だーめ」 ニホンは気にもかけずに手を動かし続ける。タイワソの引き締まった腹が泡まみれになる。 別に不快ではない。いや、むしろ気持ちがいいことが問題だった。 けっこう不器用なところもあるニホンだったが、やり始めると几帳面というか……凝り性なのだ。 ニホンが新たなボディーソープを両手に掬う。たっぷりと、だ。 そして…… 「ちょっと待て!」 そこはいいから!と言うタイワソの悲鳴にも似た言葉を気にもかけず、ニホンの手はさらに下へ伸ばされる。 みっしりと繁ったカーリーな翳りのさらに下。 湯の温もりと、言葉と裏腹にリラックスしきった彼の精神(こころ)のせいで、だらりと垂れ下がったモノ。 小柄な割には、ご立派な…… 「ううっ!」 すっぽりと手のなかに収まった黒ずんだモノを、泡越しにニホンの指が撫でる。 彼は「洗ってる」と主張するだろうが。 ぬるり、とした感触がタイワソの身体を硬直させた。 243 名前: 風と木の名無しさん 04/10/02 17:53:35 ID:iMH11jsC しごくように……、ぬぐうように……、棒状の部分から広がった部分に至るまで「ていねいに」扱う。 「………はっ、……あぁっ」 荒い息とともに、くぅ、と喉を鳴らし、タイワソがニホンの腕にぎゅうと?まり、体重をかける。 ニホンのほうはやさしい表情でタイワソを見つめている。 手は止めようとしない。 自らの手のひらのなかで急速に大きさと硬さを変えていくモノをいとおしむかのように、手は動いたままだ。 すっぽりと収まっていたモノが、手のひらからはみ出していく。 やわらかだったものが、硬く、熱くなっていく。 自分自身と、ほんの少し前に肌を重ねたときのように。 そのプロセスがニホンに、少しばかり倒錯した満足感を与えていた。 タイワソのほうは焦っていた。 気持ちがよいことは確かだったが、この状態はちょっと問題があった。 (だめだ、………このままペースを握られたら) 同じ目線で話せなくなってしまう。ただでさえ、こっちは背伸びしてるって言うのに。 昔みたいにニホンの保護のもとで過ごすか?金魚の糞みたいに、ニホンの後にくっ付いてまわるか? ……それもいいかな、とは思わないでもなかった。 244 名前: 風と木の名無しさん 04/10/02 17:54:57 ID:iMH11jsC もともとタイワソに「こういうこと」を教えたのはニホンだった。 いいや、他の事も含めて色々な事をニホンからは教わった。 彼の兄貴分であり、先生でもあったのだ。 悪い仲間からも様々なことは学んだが……ニホンから教わったものはそれとは違う。 彼、タイワソ自身の土台になっていることばかりなのだ。 いわば、ニホンは恩人であり、兄貴分であり、かつて自分を捨てた憎い相手であり…… そして、憧れてやまない目標なのだ。 (でも、だからこそ……) タイワソは思った。 (オレはニホンと対等に話したい。相手をしたい!) こんなところで腑抜けてたらダメだ!……そう自らを励まして、タイワソは動いた。 「ニホン……っ!」 彼は思い切り、ニホンへ抱きついていった。 下手に逃げるより、むしろ懐に飛び込んだほうが相手も手を、この場合字のごとく、出せなくなる。 タイワソの小柄な身体はニホンの胸の中にしがみつくようなかたちになってしまった。 「…………………」 びっくりしたように目を見開くニホンだったが、やがて慈母めいた微笑とともにタイワソを抱きしめた。 ぎゅっと、優しく。 245 名前: 風と木の名無しさん 04/10/02 18:13:09 ID:iMH11jsC なんとなく口をひらくのが億劫で、二人は黙ったまま抱き合っていた。 タイワソはニホンの胸板に頬を埋め、ニホンは腕の中のタイワソの黒髪を優しくなでる。 ただ、シャワーの音だけが浴室にある音だった。 それでも、しばらくしてタイワソが口を開いた。 「…………あのな」 「…………なに?」 ほんの少し口を尖らせてタイワソが呟く。 「追いつくから、ぜったい」 「…………うん」 「本当だぞ、ぜったいお前に追いつくから……だから」 「うん、待ってるよ」 一緒に仲良くできる日まで、待ってる。 誰もが僕らを、僕ら『きょうだい』を認めてくれる日まで………待ってるよ。そうニホンは呟く。 少し悲しい瞳(め)で。 ニホンは、ほんの少しだけ強くタイワソを抱き締めた。 (終) 248 名前: 風と木の名無しさん 04/10/02 18:45:01 ID:C07/JCjw 乙!タイワソたんカワエエ(・∀・) タイワソたんあそぼー(*´∀`)(´∀`*)うん ニホンたんだいすきー(*´д`)(´Å`*)ボクも… |