696 名前: 1/2 04/10/28 01:51:48 ID:YwEneKpg

長男=ヨ党とかヌホンの中の人とか。現当主。
次男=右の名残とか。先代当主ニッテイの血を濃く継ぐ鬼子

次男は時々弟たちが羨ましく思える事もある。
彼らは歳の離れた長男が綺麗な物に包み大事に大事に育てた。
だから綺麗事を当たり前のように言う。
綺麗事は少しも役に立たないのにとても心地良い。
ヒノモト家の実情が見えてしまう聡い己の目など煩わしくなる。
だが、それはどうしようもない事だ。
きっと弟たちには弟たちの苦労があるだろう。
現実は彼らが見るほどに美しくはないのだから。

「いいか?」
扉のノックされる音に目線を上げると少し赤い顔をした長男が覗き込んでいる。
「開けてから聞くなよ。入れば?」
うむと神妙に頷いて入る彼のネクタイも髪も僅かに乱れている。
「すまないな、少し酒を飲んでいる。」
言い訳をする長男に頷いて返しながらも次男はそれが嘘である事を知っている。
彼が酔っているふりをして部屋を訪ねる時はこれからする事は忘れる。
そういう暗黙のサインなのだ。
「屋敷修復の件だがやはりお前がつれてきたあの三兄弟に任せようと思うよ。
私にはよくわからないが優秀なんだろう?お前が年月を掛けて育てたという話じゃないか。」
伏せた睫毛の影を追い、口実の言葉が尽きる前に薄い唇を掌で抑えた。
うめくような声を出すのを無理に押さえつけて吐息の熱さを掌に感じ寝台に伏せさせる。
全く違わない、いつもの手順だった。



697 名前: 2/2 04/10/28 01:53:26 ID:YwEneKpg

長男は王様だ、と次男は思う。
疎まれる鬼子の自分を飼い慣らし世間知らずの弟たちを庇護する。
けれど恐らくそれは根からの性分ではなくこの家の当主として作った偶像だ。
支配者になるにはあまりに繊細な彼はこうして部屋を訪ね次男に組み敷かれる。
夜の下で己よりも強い雄を確めそれに喰われる錯覚を味わいバランスを取る。
そうして何事もなかったかのように日常に戻るのだ。

(……本当に喰ってしまったらどうなるだろう)
長男の肌を食みながら次男は時折そんな事を考える。
内実、長男も弟たちと同じだ。己には理解できない綺麗事を好んでいる。
だったらいつか太陽の下でも彼を押さえつけ、蹂躙して庇護する対象に貶めてはどうだろう。
父親のように弱くも美しい兄弟たちを支配してこの家を栄えさせるのだ。
表に出ることさえ疎まれる次男が先代の血を一番濃く受けているのは全くに皮肉な話である。
深く抉ると体の下の長男がしっとりとした裸の胸を圧しつけながら鳴き次男を大いに満足させた。
(今は此れでいい。)
いつかは足りなくなるかもしれない。
けれど、先のことなど闇の中。考えても詮無い事なのだ。
やがて二つの影は溶け合って朝の光に照らされる前にまた分かれる事になる。
ただそれだけの話である。


ちなみに次男ご自慢の使用人三兄弟は陸くん空くん海くん。